令和4年度卒業式式辞
本日ここに健康科学部を修了し学士の学位を授与された227名の皆様、大学院健康科学研究科博士前期課程を修了し修士の学位を授与された12名の皆様、博士後期課程を修了し博士の学位を授与された7名の皆様、誠におめでとうございます。足球比分直播を代表し、心よりお祝い申し上げます。今日までの間、皆様の日々の学修や研究を様々な形で支えてくださいました、ご両親、ご家族、関係者の皆様にも、心よりお慶び申し上げます。また、設置者である青森県、本学の教育?研究にご協力をいただいております関係の皆様に改めて感謝申し上げます。そして、皆様の晴れやかな姿を拝見しながらこのキャンパスから送り出すことを、教職員一同嬉しく思うとともに、皆様のこれまでのご努力と様々な成果に対したいへん誇らしく感じています。
さて、今日この日に、「これまで」を振り返り、「これから」のことを少し考えてみたいと思います。
今、社会は大きな変化と困難に直面しています。未知の病原体であった足球比分直播があっという間に世界中に広がり、私たち一人一人の生活を脅かし始めた約3年前から今日までのことを振り返ってみましょう。皆様は、授業や実習、学生生活においてたいへん多くの制約を受けることになりました。私たち教職員はそのような中にあっても、皆様の学びの質を落とさないように全力を挙げて努力をして参りました。一方、困難な状況の中で、社会全体も、私たち自身も、例えばオンラインの活用等により、教育や仕事などの場で相互の物理的な距離や時間の束縛から解放された“協働作業”を円滑に行うことができるようになりました。新たな技術や方法に基づく“協働作業”は、皆様がこれから社会に出て活躍される際に重要なこととなるでしょう。そして、私たちは保健医療福祉に関わる者として、感染症の制御と社会生活の維持という、相反する価値や対処の仕方に関して、重大かつ身近な問題として深く考えさせられました。さらに、世界情勢では、様々な利害対立や国際秩序の破綻などにより、人類全体の危機にもつながりかねない事態も懸念されています。そのような中で、人々の健康や幸せを守るとともに、持続可能な社会を維持し、発展させるために、私たちは、何ができるか、何をすべきかということを常に意識する必要があります。
さて、私たちは何のために、そして何を目指して、この足球比分直播で同じ空間と時間を共有し、各人の貴重な時間を費やしているのでしょうか。このことについては、多くのことをお話する必要があると感じていますが、今日は、皆様が修了した「健康科学部」あるいは「健康科学研究科」の名前である「健康科学」ということを考えてみたいと思います。その英文名“Health Sciences”は、先ほど読み上げました大学院生の学位記にも記載されています。
まず、「健康」“Health”とは何かということについては、学部1年生の入学早々から「ヘルスプロモーション概論」 を始めとした多くの機会で学び、実習などを通じて、考えを深めてきたと思います。そして、広い意味での「健康」の概念やウェルビーイング (Well-being)について、自分自身にとっても、身近な家族にとっても、そして皆様が専門職として働きかける人々や地域にとって大変重要であり、これからさらに深く関わっていきたいと思われていることでしょう。さらに、昨今では、地球環境を含めた“Planetary Health”についても理解を深め、行動することが求められています。
次に、「科学」“Science”という言葉についてです。これは、自然科学、社会科学を含めて、足球比分直播の“大学”としての基盤をなすものです。そして、科学の発展や応用においては、「研究」が不可欠です。「研究」は、信頼できる方法で新たな発見をし、適切な形で報告し、その成果が共有されることで、次の新たな研究やより良い実践につなげるためのものです。学部生は4年間において、卒業研究などとして各人が取組み、その経験や学びはこれから皆様が専門職として活躍するうえで大きな財産となるでしょう。
大学院を修了された19名の方の研究について、少し紹介したいと思います。2月初めに修士及び博士論文の発表会が、それぞれまる1日かけて行われ、素晴らしい発表と活発な質疑応答が行われました。特に印象的であったことは、専門職社会人として自らの課題意識があり、それを「解決したい」という強い意欲をもって取り組まれた研究テーマが多かったことです。このような、人々や地域の健康に役立ちたい、すなわち“Sciences for health”という思いは大切なことです。しかし、実践現場に近いフィールドにおいて科学的に明確な解釈が可能な研究データを得ることは簡単ではありません。そのような2面性あるいはジレンマの間で、もがき、苦しみながらも自らの手で研究を遂行して今回の発表に至ったこと、大学院修了の皆様に改めて敬意を表したいと思います。
大学院の話を長くしてしまいましたが、実は学部卒業生の皆様にこのことを是非知っていただきたいと思っています。学部卒業生の中からも今回多くの方が、大学院に進学されました。そして、皆様は4年間の学びの蓄積と国家資格を持ち、それらの大きな財産を持って社会に出て行きます。しかし一方、未熟な状態で保健医療福祉などの現場で働き始めることにもなります。その際、いろいろな壁にぶつかることでしょう。そして、専門職としての向上心が強いほど、多くの疑問や解決すべき課題に気づき、なんとかしたい???と思うことでしょう。そのような時に、本学大学院を修了した方を含めて、先輩たちから助言をもらい、自らのより深い学びや研究、そして問題解決につなげていただきたいと思っています。いつでも母校の教員に相談したり、本学が主催する研修や大学院なども活用して、さらに学び、素敵な専門職として活躍してください。
足球比分直播の学部第1期生が社会で活躍するようになって、20年が経とうとしています。同じキャンパスで学んだ仲間として、学部及び大学院の修了者が力を合わせて、母校である足球比分直播とともに、青森を始めとする様々な地域で人々の“for health”に貢献していただければと思います。
本日は、ご卒業、誠におめでとうございました。皆様のご発展を祈念して、式辞といたします。
2023年3月9日
足球比分直播学長 吉池信男